ゴミ屋敷問題に直面した時、「どうしたらいい」かと考える前に、なぜ部屋がこのような状態になってしまったのか、その「心の原因」を深く理解することが重要です。単に片付けが苦手というレベルを超え、そこには複雑な心理的要因が潜んでいます。まず、最も一般的な原因の一つに「物を捨てられない」という心理があります。これは、「もったいない」「いつか使うかもしれない」「思い出の品だから」といった感情が強く働き、必要のない物まで手元に置き続けてしまう状態です。特に、過去の喪失体験（大切な人との死別、失業など）や、孤独感が背景にある場合、物をため込むことで心の空白を埋めようとしたり、安心感を得ようとしたりすることがあります。次に、「決断疲れ」も大きな要因です。物が多ければ多いほど、一つ一つの物に対して「いる」「いらない」の判断を下すことは、想像以上に脳のエネルギーを消費します。この決断の回数が増えることで、やがて思考が停止し、何も決められなくなる「フリーズ」状態に陥ってしまいます。この状態では、片付けを始めること自体が困難になるだけでなく、問題がさらに悪化する原因となります。また、うつ病や発達障害（ADHD、ASDなど）、強迫性障害（ためこみ症を含む）、認知症、あるいはセルフネグレクト（自己放任）といった精神的な不調も、ゴミ屋敷化の主要な原因となります。これらの疾患は、意欲の低下、集中力の欠如、判断力の鈍化などを引き起こし、ゴミ出しや片付けといった日常生活の基本的な行動を困難にさせます。社会との接点が希薄になり、孤立感が深まる中で、自分の部屋の惨状を他人に知られたくないという羞恥心から、さらに心を閉ざしてしまう悪循環に陥ることもあります。これらの心の原因を理解することは、自分自身を責めるのではなく、問題を客観的に捉え、適切な対処法を見つけるための重要な出発点となります。必要であれば、精神科医やカウンセラーなど、専門家のサポートを求めることも検討しましょう。