ゴミ屋敷問題は多くの場合、専門業者の介入で解決されますが、稀に自らの強い意志と周囲の支えによって自力で環境を改善し、その後の清潔な生活を維持し続けている成功事例も存在します。五十代のトラック運転手の男性は、長年の不規則な生活とセルフネグレクトから、二階建ての一軒家を丸ごとゴミで埋め尽くしてしまいました。家の周囲にまで溢れ出したゴミは道路を塞ぎかけ、近隣住民とのトラブルは絶えず、ついには行政代執行の候補リストに載るほどの危険な状態でした。しかし、転機は彼が心筋梗塞で倒れ、救急隊員が部屋に入れずに救助が遅れたことによる「死の恐怖」でした。退院後、彼は「このままゴミの中で死にたくない」という猛烈な反省から、毎日一袋のゴミ出しを自らに課す決意をしました。最初は玄関から始め、一日にわずか三十センチずつ床を見せていくという地道な作業を、彼は仕事の合間に一年間、一日も欠かさず続けました。その過程で彼は、三十年前に亡くなった母親の写真や、自分が子供の頃に大切にしていた道具をゴミの下から救い出し、そのたびに「自分を大切にする」という意味を再確認していきました。近隣住民も、彼のひたむきな姿を見て、次第にゴミ出しを手伝ったり、励ましの言葉をかけたりするようになりました。一年半後、ついに全ての部屋の床が見えるようになり、彼は仕上げとして専門の清掃業者を呼び、長年の油汚れや染みを根こそぎ洗浄してもらいました。この事例の特筆すべき点は、清掃が終わった後に彼が「掃除の習慣」を完全に身につけ、その後三年間、一度もリバウンドしていないことです。彼は現在、地域の清掃ボランティアに参加し、自分の経験を同じ悩みを持つ人々に語る活動をしています。自力での脱出は極めて困難ですが、この事例は、適切な動機づけと周囲の温かい支援、そして何よりも「自分を変えたい」という本人の強い意志があれば、どれほど深刻なゴミ屋敷からでも人間は再生できるという希望を私たちに与えています。