亡くなった祖父の家はいわゆるゴミ屋敷で、私たち家族は長年その存在に頭を悩ませてきました。玄関を開けた瞬間に漂う古びた紙と埃の匂い、そして廊下を埋め尽くす雑誌や日用品の山。遺品整理を始めた当初は、どこから手をつければいいのか分からず、ただ溜め息をつくばかりでした。しかし、作業を進めていくうちに、台所の奥にある開かずの納戸から、丁寧に風呂敷に包まれたいくつもの木箱が出てきたのです。祖父は生前、自分の趣味について多くを語る人ではありませんでしたが、その箱を開けてみると、中には深い緑色をした重厚な茶碗や、細かな模様が施された小さな香炉が収められていました。当初、私たちはこれらも「古いゴミ」の一つとして処分するつもりでした。しかし、たまたま作業を手伝いに来ていた知人が「これはただの物ではないかもしれない」と助言してくれたため、急遽、骨董品の出張鑑定を依頼することにしました。やってきた鑑定士の方は、ゴミの山をかき分けながら納戸まで辿り着くと、一つ一つの品を懐中電灯で照らし、ルーペを覗き込んで慎重に調べ始めました。その真剣な眼差しを見て、私は自分たちが捨てようとしていたものの重みを初めて感じました。結果として、それらの品々の中には、大正時代の有名な作家による作品や、江戸時代末期の輸出用磁器が含まれていることが判明しました。鑑定額の合計を聞いたとき、家族全員が耳を疑いました。それは、ゴミ屋敷の片付けに必要な多額の費用を余裕でカバーし、祖父の法要を豪華に行えるほどの金額だったからです。ゴミだと思っていたものが、実は祖父が人生をかけて守り抜いてきた「宝」だったと気づいた瞬間、私たちの家に対する見方は一変しました。それまで忌まわしい場所だと思っていたゴミ屋敷が、祖父の生きた証が詰まったタイムカプセルのように思えてきたのです。骨董品が見つかったことで、私たちはただ物を捨てる作業から、祖父の記憶を一つ一つ拾い上げる作業へと気持ちを切り替えることができました。もし、あのまま何も考えずに全てをトラックに積み込んでいたら、祖父が大切にしていた心までも捨ててしまうところでした。ゴミ屋敷の片付けは確かに過酷ですが、その奥底には、時として家族の絆を繋ぎ直すような素晴らしい発見が隠されているのだと、身をもって体験しました。
祖父のゴミ屋敷から骨董品が見つかった話