私は以前、あるゴミ屋敷の清掃依頼を受けました。その家は、長年の間放置された結果、完全にネズミたちの「王国」と化していました。初めて足を踏み入れた瞬間、私はその光景に言葉を失いました。天井からは彼らが走り回る音が響き、床には無数のネズミの糞が散らばり、至る所に彼らが齧った痕跡がありました。特に驚いたのは、リビングの中央に積み上げられた雑誌や衣類の山の中に、ネズミの家族が営巣していたことです。母親ネズミが子ネズミたちに授乳する姿を見たときは、思わず目を背けてしまいました。ゴミ屋敷は、ネズミにとって理想的な環境を提供します。彼らは隠れる場所、食料、そして繁殖のための安全な空間を容易に見つけることができます。人間が作り出した無秩序な環境が、彼らの生態系を育む温床となっているのです。私が清掃作業を進める中で発見したのは、ネズミたちが実に巧妙に生活空間を利用しているということでした。彼らは壁の隙間や家具の裏、そして散らばったゴミの山を巧みに利用し、人間の目から逃れていました。そして、彼らが食べた痕跡があるゴミの山の中には、様々な種類の食品が混じっていました。お菓子、パン、野菜の切れ端、そしてペットフードの袋まで。彼らは人間の食べ残しだけでなく、人間が捨てたはずの物まで食料として利用し、その生命を繋いでいました。この経験を通じて、私はゴミ屋敷とネズミの関係が、単なる害獣駆除の問題ではなく、一つの複雑な生態系として捉えるべきものであると考えるようになりました。人間が無意識のうちに作り出してしまったこの環境が、ネズミたちの生存戦略を支えているのです。だからこそ、根本的な解決のためには、単にネズミを駆除するだけでなく、彼らが住み着く原因となるゴミ屋敷そのものを改善することが不可欠であると私は確信しています。それは、人間とネズミ、それぞれの生活空間を明確に分離し、共存ではなく、それぞれの領域を守るための戦いなのです。