現在、日本全国のゴミ屋敷の正確な数を把握する統計はありませんが、この問題に関連する様々な統計データを分析することで、その未来像をある程度、予測することが可能です。そして、その予測は、残念ながら、決して明るいものではありません。このまま対策を講じなければ、日本のゴミ屋敷の数は、今後さらに増加していく可能性が極めて高いと考えられます。その最大の根拠となるのが、急速に進む「高齢化」と「単身世帯の増加」です。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、日本の高齢化率は上昇を続け、2040年には、人口の約35%が65歳以上になると予測されています。また、生涯未婚率の上昇や核家族化により、一人暮らしの高齢者世帯は、今後も増え続ける見込みです。ゴミ屋敷の住人の多くが高齢者であり、かつ単身世帯であるという現状を考えれば、この人口動態の変化は、そのまま「ゴミ屋敷予備軍」の増加に直結すると言えます。さらに、「認知症患者数の増加」も、この予測を裏付けます。厚生労働省の推計では、2025年には、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になるとされています。認知症による判断力の低下は、ゴミ屋敷化の大きなリスク要因であり、この増加も、将来のゴミ屋敷数を押し上げる要因となるでしょう。加えて、経済格差の拡大や、地域コミュニティの希薄化といった、社会的な「孤立」を生み出す構造も、すぐには改善が見込めません。これらのネガティブな要因を総合すると、日本のゴミ屋敷問題は、今後、さらに深刻化し、その数は、現在の数万件という推計を、はるかに上回るレベルに達する恐れがあります。この暗い未来予測を覆すためには、もはや対症療法的なアプローチだけでは不十分です。高齢者が孤立しないための地域包括ケアシステムの強化、早期発見・早期介入を可能にする法整備、そして、私たち一人ひとりが、この問題を自分自身の問題として捉え、社会全体のセーフティネットを再構築していくという、強い意志と行動が、今まさに求められているのです。